塾長ブログ

2022.04.05

自分に勝つ(塾報3月号より)

 3年前、大阪桐蔭高校の運動会を生で見ました。甲子園春夏連覇を達成したメンバーが出場するクラブ対抗リレーは圧巻で、野球部の他に全国制覇をしたラグビー部や走るのが本職の陸上部もエントリーする真剣勝負です。

 午後に予定されていたプログラムですが、昼食休憩が始まった頃にはすでにリレーの出場メンバーがトラック周辺に出てきて、クラブごとにまとまって柔軟体操を始めました。にこやかに談笑しながら30分以上は続けていたでしょうか。
 イチロー選手がオリックスでプレーしている様子を球場で何度か見たことがあります。イチロー選手はイニングの間だけでなく、投球と投球の間にもしょっちゅうストレッチをしていました。
 大きなけがをせず、四十代半ばまで第一線を走り続けたのにはこういう姿勢がものをいったのだと素人ながら感心してみていました。
 この二つの例を挙げたのは、技術を習得し使いこなすためには、愚直なまでに基礎基本を意識的にしっかりと繰り返すことの大切さがわかりやすいためです。
 星の郷教室では、同じ問題を基準タイム以内で、満点あるいは一失点でできるまで何度も繰り返して練習することがよくあり、「パワーアップ練習」とよんでいます。
 徹底的な繰り返しは、指の動きを一層なめらかにし、間違いの防止と速度アップにつなげる練習です。
 しかしながらパワーアップ練習では最初に自分で書いた答えの上に別の紙を被して計算していきますから、練習の意味を理解していなかったり今の状況から逃げ出したい生徒の中には禁じ手を使う場合がちらほらと見受けられます。
・その気になればいくらでも正解を見ることができる「複写之術」
・途中で一旦ストップウオッチを止め最短タイムになるように調整する「ワープ之術」
・自己採点後間違えた答を書き直し、最初から正解だった風を装う「なかったことにする之術」
・正解している答を間違えているものと勘違いし、わざわざ別の問題の答えを写して書き直す「すり替え失敗之術」
 パワーアップ練習とは直接関係ありませんが、術の紹介ついでに・・・
・前の席が空いているにもかかわらず後ろの席に座る「どうかそっとしておいて之術」
・死角でもない席にそこが死角だと信じ切って身を隠す「頭隠して尻隠さず之術」
・採点の列に並びながら、自分の番が近づくとなぜか後ろの生徒に先に行くようにすすめる「譲り合い之術」
・特に行きたくもないのにトイレに行く「不要不急便所こもり之術」
・仲のいい友だちと隣同士で座ろうとする「何か勘違いをしているぞ之術」
・わざわざ遠回りをして採点の列に並んだり遠回りをして自席に戻る「時間稼ぎ之術」
・壊れてもいないシャーペンを修理するふりをしている「偽修理師之術」
・何もせずにじっと壁を険しい目で見つめている「昭和ヤンキー之術」
・何もしていないのに何かをしている風を装う「アリバイ作り之術」
 これら、どこか憎めなくて人間味溢れた子どもたちは、言動のどこかに「今まさに何かの術をかけていますよ」というサインを出しています。
 意味もなく目が合ったり、机間巡視をしているスタッフの立ち位置を何度も確認したり、それはそれはおもしろいものです。
 今にも漏らさんばかりの勢いで息せき切って「トイレに行っていいですかっ!」という生徒が2階にあるトイレ目指して階段を上るその瞬間、「実はね、今日ね、……なことがあってね」と話し出すと階段のところで立ち止まって話を聞いたりしているのですから人間の膀胱とはなんとも融通が利く作りになっていることがわかるのです。
 そろばんやあんざんの練習では、取り組む身体の角度、鉛筆の濃さや数字の形、点数、間違い方などが、時として精神状態までをも雄弁に語る瞬間があります。
 やる気に充ち満ちている時は指導者が口を挟む余地など見つけられないほどで、表情、声の大きさ、歩き方からしてオーラが出ていますし、点数報告時の鼻息が違います。
 しかしどこかのバランスが崩れ、それでもなんとか体面を保とうとしていろいろとよからぬ「術」を駆使し、その場を切り抜けようとする気持ちがムクムクとわき出ているときには、答案からも表情からもなんとなく負のオーラを感じます。これは生徒の心の叫びでもあって「心の成長痛」のようなものでしょうか。
 人間は弱い生き物です。目の前に誘惑があればついつい誘いの手に乗ってしまいます。だから、そうならないために学習します。できないことをできるようになるためにがんばります。
 今までの経験上、子どもたちは、何度か直接注意を受け、あるいは注意を受けている他の生徒を見て、どういう行動をすれば正しく伸びていくか、どういう行動が学習者として好ましいものであるかを学び取って、「正しく成長する術」を身につけていきます。こうして自分に勝っていきます。
 好ましくない術の使い手から好ましい術の使い手に変わるまでに要する期間は様々です。何度も痛い目に遭わないとわからない人もいますし、たった一回の薬が効く生徒もいます。最初から好ましくない術を全く使わない生徒ももちろんたくさんいます。
 指導においては、人格を否定したり人格に注意を与えるのではなく、あくまでも行動や言動に対して注意を与えながら、「何がそういう行動に走らせるのか」という背景に考えを巡らせて対処していきます。うまくいくこともありますし、うまくいかないこともあります。現実は、ドラマのようにはいきません。時にはまったくピントはずれになっている指導もあるかと思います。
 教室だけの指導にとどまらず、ときには保護者の皆様に報告して、共同で対処をする場合もあります。繰り返し指導してもなかなか改善しないときや緊急を要するときです。すると「術」は実は教室だけで使っていたものではないことがわかることもしばしばで、そうなると保護者の皆様と教室とで共同して対応にあたることになります。
 いつか書こうと思っていた話題でしたが、いざこうして文字にすると大変なことが教室で起きているかのような感想をお持ちになるかもしれませんが、時が経てば、「術」はやがてはきれいに消え去って笑い話に昇華していくことがほとんどですからどうぞご安心ください。
 人間は実にもろく、弱く、悲しいものですが、だからこそ愛おしく、育ち甲斐も育て甲斐もある生き物です。
 そろばん教室で子どもたちが過ごす時間は一生のうちでわずかです。一分一秒たりとも無駄にしないことを目指して、令和4年度新学期のスタートを切ります。

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