塾長ブログ

2021.11.26

積極性(塾報11月号より)

●先月号で書きました「自信満々で間違えよう」というテーマは、考える癖をつけることの重大性について訴えることを目的に書きました。
 そろばんの練習において「考える」場面は、そろばんを使った計算方法を覚えていく段階と、スピードをつけたり間違いを減らすために工夫をする段階に現れますが、今月号では「考える」という心の動きを生み出す「積極性」について書いてみます。
●星の郷教室にはソフトボールや野球をしている生徒がたくさんいます。土曜日の練習や日曜日の検定試験にはユニホーム姿で教室にやってくる生徒の多さからわかります。かくいう私も、小学校時代は少年野球チームに所属してピッチャーをしていました。背番号は1。2歳年上のエースがキャプテンで、キャプテン番号の10番をつけたために転がり込んできたエース番号でしたが、投手としての成績は全く記憶していないのに背番号だけは鮮明に覚えていますからよほどうれしかったのでしょう。
 大学時代には名球会という名のソフトボールチームに所属して「3番・ショート」でした。新入生歓迎ソフトボール大会では200チームが参加する中で優勝しましたから、なかなかの強豪チームだったのです。
 名球会にはキャプテンも監督もいませんから作戦も何もあったものではなかったのですが、ただ一つ暗黙の了解みたいなものがあって、それは「見逃し三振は即交代」というものでした。
 バットを振らなければ何も起こらず、振れば間違って当たることもあればキャッチャーが後ろにそらす確率も増えるでしょう。
 審判は素人で、我々も素人。ボールとストライクの見極めなんて互いにあてにしていませんから、とにかくバットが届くところは振るのです。そうしないと、ホームベースから遠く離れていても、時には頭のあたりを通る球でさえも、よそ見をしている審判が「ストライク!」とコールすることがあるのです。
●懇意にしていただいているそろばんの先生はその昔とある高校の日本拳法部の部長をしていらっしゃいました。いわく、「日本拳法のことはまったく知らなかったが、組み手では『ひたすら前に出て拳を突き出せ』という指示だけを徹底していた」そうで、相手から良い突きを受けて下がろうものなら部長にこっぴどく叱られる部員は前に出て突き続けるしかありません。その結果、なんとそのチームは団体日本一にまで上り詰めました。
●奈良の智辯高校と智辯和歌山高校で野球部監督を務めた甲子園勝ち数歴代一位監督の髙嶋仁さんは、打つべき球を見逃した選手は直後に交代させたそうです。積極性の大切さについて身体に染みこませるため、とおっしゃっています。
 これら二つのエピソードと一つの無駄話は、髙嶋元監督の言葉にある“積極性”の重要性と、積極性が物事を成功に導くための原動力に十分になり得ることを物語っています。
●さて、好奇心は旺盛であっても入塾初日から積極的な生徒はまれで、ふつうは少しずつ雰囲気に慣れながら徐々に本領を発揮していきます。教材が進んでいくにつれて自信が芽生え、あわせて教室内での立ち居振る舞いにも慣れ、できないことができるようになり、時には自己最高点を更新し……。練習の中で起きるこうした「ちょっとした成就感」を味わうことで積極性が知らず知らずの間に醸成されていくのでしょう。
 しかしながら、何らかの理由で自信が持てないときは、積極性など出ようものではありません。生徒の皆さんは正直ですから、態度にはっきりと出ます。練習中の姿勢であったり、質問や採点依頼の回数であったり、教室内を歩く速度や選ぶ通路であったり、説明を聞いている際の視線であったりと、本人も気がつかないうちに様々なサインを出しています。
 私たちはそのサインを見逃さないことと、サインに対してどのようなアプローチを試みるか、またはあえてアプローチを試みずに様子を見るかを選択するのが仕事の重要性の8割を占めているといっても差し支えありません。たとえるならば「捕った魚を与えるか。魚の捕り方を学ぶ援助をするか」の選択となるでしょうか。
●答案や計算時の様子から自信が持てない理由を類推し、時には質問を投げかけてみて反応を見ながら指導の選択をしていくわけですが、そこには生徒が魚を与えられることをじっと待っている感情の度合いも加味しています。
 魚を待っている生徒にとっては、自分で魚を捕るようにアプローチされるのは鬼のような対応かもしれません。
 しかし、踏ん張って積極性を出せばあと少しで自分自身で魚を捕ることができると判断した場合や、ここは頑張るべきだと思った場合は、鬼になってでも生徒が殻を破るように指導をします。
●人は、学校やそろばん教室のような教育機関で何かを教えられる年数よりも遙かに長い年数を自分で考えて歩いていかなければなりません。道中は選択の連続です。見ようと思って見ないと目に入らないものや、聴こうと思って聞かないと耳に入らないものもあります。
●指導された計算方法を「一度の説明で覚えきろう」という心構えや、間違いを防ぐために「慎重に計算しよう」という集中した状態は、自分から進んで伸びていこうという積極的な態度をもつことで生まれてきます。また集中した結果によって得られる成就感が積極的な姿勢を生み出すこともあります。

 教室では様々な場面においていろいろな仕掛けをちりばめながらすべての生徒の皆さんが積極性を獲得していくことを目指しています。 

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