塾長ブログ

2021.08.09

なくせ、七癖(塾報7月号より)

 「なくて七癖」という言い回しがあります。癖がないように見える人でも、詳しく観察すればなにがしかの癖があるという意味です。

 入会・体験時からすでに誰しも特徴があります。手指の動きのなめらかさ、身のこなしなど、わずか5歳であっても他のなにものでもない確固たる自分がそこに存在します。
 お兄ちゃんやお姉ちゃんがすでに習っている場合、後ろ姿や歩く姿勢、そろばんをはじくときの首の角度など、思わず吹き出したくなるほどそっくりなこともあります。特徴は持って生まれたものの影響が大きいことがわかります。DNAの底力を感じずにはいられません。
 「特徴」と似て非なるものに「癖」があります。癖には、計算中にそろばんの同じ珠を2回触ったり、答を書く前に筆記具を大きく動かすといった無駄な動き、すなわち動作に関わるものと、集中力の低下によって出てくる間違い癖という意識に関するものとがあります。
 そろばん学習はすべて「模倣」から始まります。そろばんと問題の位置関係、答を記入するときのそろばんの位置、手首の動き、珠の動かし方、親指と人差し指の役割など、体格を考慮しつつも定石に則って、見よう見まねで基本動作を覚えます。「自分のやりたい動き」をできるだけ封印し、「あるべき理想の姿」を真似ることが大切で、この段階では矯正すべき癖はありません。
 ところが、学習が進んでくると、先に挙げたような直さなければならない癖が知らず知らずのうちに身についてしまうことがあります。「知らず知らず身についた」ものは、完全に馴染んでいますから自分自身で気がついて矯正することは困難です。
 動作に関わる癖の発見は、ビデオ撮影や机間巡視で行います。質問に来たときに発見することもあります。
 また、意識に関わる癖の発見は、答案の分析で行います。点数の善し悪しではありません。指導の効果を測る物差しとして「点数」は大きな要素ですが、たとえ高得点であったとしてもわずかな失点の原因に「癖」が隠れているならば、高得点を手放しで喜ぶわけにはいかず、指導が必要となります。
 癖の指導は一度で終了することもありますが、二度三度またはそれ以上繰り返すこともあります。一旦直っていたものが、時間が経過するにつれ、またもや頭をもたげる場合があるからです。身についてしまった癖を直すには「無意識を意識する」強い精神力が必要です。身についたものを取り除くのに強い精神力が必要なのはダイエットと同じです。
 癖の矯正というと負のものを取り除いて正常に戻るイメージがありますが、実際はそこにとどまることはなく、「癖の矯正」は「技術アップ」につながることがほとんどです。「癖」が技術アップにふたをしていたため出ていくことができなかったパワーが、ふたを取り去ったことで一気に表出するというほどのイメージになるでしょうか。
 そろばん指導において基本的な計算法を教えることは、上達に必要なすべての指導の中で1割にも満たないものです。残りの9割には、癖の矯正やメンタル面強化、実力に応じた新たな計算法の指導、正確性や速度を上げるための工夫、自分自身で練習方法を組み立てるためのアドバイス、個々に応じた教材開発・教材作成などがあり、指導の枠を越えた部分に、練習環境作りがあります。
 さらにいえば、これらの要素の良否は提供側から評価するものではなく、すべて「生徒の事実」から判断されるべきものだと私たちは考えています。連続的かつ向上的な生徒の変化のみが指導に対する評価になるのです。
 癖を見抜く。癖を身につかせない。癖を絶つ。今月号は「癖」を題材にして指導の一コマを紹介させて頂きました。

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